3年ぶりにコンテンツを作ってみると、タイトル画像がやけにでかくなった気がする。老眼が進んだせいか?
 さて。私の会社では、10年ごとの節目に年間10日(2分割取得OK)の休暇制度がある。
昨年度で勤続30年が満了し、今年度はその権利を行使できる。もう年齢的に次の「40年」はないから、この機会に好きなことをさせてもうらうことにした。いつも好きなことをさせてもらっているけれど、今回はさらに特別である。

 いつも鉄道旅行の話ばかりしているが、実は船旅も好きだ。
鉄道には、決められた2本のレールの上から落っこちることなく、複雑なダイヤの隙間を通すようにして列車が走るというシステマティックな工学美がある。一方、船には決められたレールは無い(航路はあるけど)。不安定な水の上を、自分で右だ左だと舵をとって、ドンブラコドンブラコと進まなくてはならない。そのあたりのアナログさがいいような気がする。
 ところが我が家の家族は全員、船嫌いときている。「酔いそうだからイヤ」というのはまだわかるが、「地に足の着いてないのが
イヤ」といわれては、ソコがいいのよ、という当方にとって妥協点が見出せない。子供が小さくて拒否権を行使できなかった頃は、フェリーで九州に行ったり、瀬戸大橋の遊覧ツアーに行ったりと、そこそこ強権発動もできたが、最近ではそうもいかなかった。
今回こそ、ひとりで思い切り船に乗るチャンス到来である(子供か)。



 計画段階では、何をたくらんでも自由だ。この際、費用のことは考えずにできるだけたくさん船に乗るにはどんな方法があるか、考えてみた。
時間的・距離的に最長を目指そうとすれば、おそらく沖縄航路がトップだろうが、大阪と那覇を往復する2レッグだけでは味気ないし、運航日があまりにも限られているので、これは除外する。
 こちらの休みに収まる範囲内でおそらく最長と思われるのは、次のようなプランだった。

   ●大阪〜舞鶴〜《フェリー》〜小樽〜札幌〜苫小牧〜《フェリー》〜大洗〜東京〜《フェリー 2泊》〜新門司〜別府〜
    《フェリー》〜八幡浜〜松山(東予港)〜《フェリー》〜大阪(南港)

 これで足掛け7日間、運賃は6万5千円強(フェリーは2等またはツーリストクラス利用、列車は普通列車運賃のみ)。
これはわれながらよくできたプランで、大洗に上陸後は、東京に出るまでの間に鹿島臨海鉄道に乗ることになる。北海道に行った
ついでに日本の私鉄でも有数の珍品に乗ってしまうという点が、いかにもスキ者という感じで良い。何より本州から北海道・九州・
四国と、本邦四島をすべて制覇するというのはスケールがでかい。
 それでは、とさっそく実行に移したいところだが、これはあくまでも計画段階での遊びであって、予算の都合上、本番ではこうは
いかない。好きにさせてもらう、と壮語した割にはみみっちいのだが、とにかく日数や費用その他を5通りほど考えた末、最終案は
次のとおりとなった。

   ●大阪〜名古屋〜《フェリー 2泊》〜苫小牧〜札幌〜苫小牧〜《フェリー》〜敦賀〜大阪

 これで足掛け4日間、運賃は2万6千円強となった。ここに食費と諸経費をあわせて、総経費はざっと5万円程度と見込まれる。
それにしても3泊4日で北海道に行って、宿泊費と交通費込みで3万円かからないというのは驚異的だろう。3日連続の船中泊、
ホテルを使わない現地「ゼロ泊」のなせる技だが、特に往路(名古屋〜苫小牧)の太平洋フェリーは、1ヶ月前までにネット予約
すれば、なんと運賃が半額になる。2等寝台に船中2泊して、わずか「5,400円」で北海道に行けてしまう。これは使わない手は
ないだろう。
 そのかわり時間はかかる。名古屋発19時、苫小牧到着は「翌々日」の11時。40時間の船旅は、普段なかなかできることでは
ない。そういう意味でも、今回は特別なのである。

 それにしても、友人や同僚に「今度北海道に行ってきます」と言うたびに、「いいですねえ。ご家族もご一緒に?」と聞かれるのは
どうしたことか。
「いや、一人です。」 「・・・・ああ、そうですか。」
このいぶかしげな間で、何を言いたいかはわかる。しかしいちいち説明するのもはばかられる。こんなアホらしいスケジュールに、
誰が好き好んでついてくるものか。



 やや詳細な行程は右図の通り。 《ざっくりとした地図はこちら》
 一見、北海道までをフェリーで往復するだけのシンプルな行程に見えるが、
ここには3つのイベントが仕込まれている。
 
 1つ目は、当初の目的のとおり、船旅を満喫するというもの。往復で60時間以上の
船中をどう過ごすのか、一種の人体実験ともいえるが、旅の動機としては、なんら
世に恥じることは無い。

 2つ目は、大阪から名古屋までの移動に新幹線ではなく、近鉄大阪線を使う。
しかも大阪上本町から近鉄名古屋までの全線を、各駅停車で走破するという、
恐らく世界初(だったらいいな)の試みである。これは立派な人体実験だろう。
マニア度も一気に高くなる。

 3つ目は、札幌市内でのアクテビィティで、某テレビ番組と、某映画のゆかりの
地を駆け足で回る。俗にマニアの間では「聖地巡礼」と呼ばれ、ヘタすると正常な
方には嫌悪感すら催させるかも知れない所業である。
 具体的には、地下鉄南平岸駅かいわいと、ススキノを主戦場に徘徊する。
わかる人にはこれでわかるだろう。わからない人は、当方がこっぱずかしくなる
ので、この先は読んでいただかなくてよろしい。

 なおタイトルの「“各駅”停車」とは、自宅の最寄り駅を出発してから札幌に到着
するまで、優等列車を一切使わずに、各駅停車だけでたどり着くことに由来する。
ただしフェリーは港であって「駅」ではないから、いわくありげなカッコ(“ ”)付だ。



 そんなわけで、なかなかひとくくりにはできない内容なため、それぞれのステージ
ごとに稿を分けて掲載していこうと思う。この原稿は取り合えずの序章(イントロダク
ション)として、ひとまずこれでアップすることにする。




●タイトル画像について:札幌テレビ塔の夕景。これから札幌を離れ、苫小牧へ
 向かう直前に撮影。

●背景画像について:単なる北海道のイメージカットです。ただのフリー素材です、
 どうもすみません。


《北海道ゼロ泊4日 “各駅”停車の旅》 インデックス

   ■イントロダクション  (このページ)


   ■近鉄で大阪〜名古屋の全駅に停まってみた
       @ 大阪線 篇
       A 名古屋線 篇

   名古屋臨海高速鉄道 西名古屋港線 つまり“あおなみ線”


   
太平洋フェリー 《いしかり》 乗船記

    その他、順次掲載します。



(C) KIXLOCAL(Takashi Kishi) all rights reserved, 2014 - 2016.