まず冒頭からお詫びである。
 伊勢中川駅で撮った特急車両群がカッコ良かったので、これをモチーフにカラーコーディネートまでバッチリ決めてタイトル
画像を作ってみたものの、そもそも今回は特急になど絶対乗ってはいけない旅なので、文字通り看板だおれもはなはだしい。
ただの思いつきでごめんなさい。でもこの画は気に入っているんで、このまま上げます。

 さて。まずは苫小牧行きのフェリーが出る名古屋まで移動しなければならない。運賃的にはJRよりも近鉄が断然安い。
《JR東海道線》大阪〜名古屋 3,350円、《近鉄大阪線・名古屋線》大阪上本町〜近鉄名古屋 2,360円。なんと七掛けだ。
 朝7時台に自宅を出発。とにかく札幌まで“各駅”停車で行かねばならないから、特急はおろか快速も使ってはいけない。
 まず、JR阪和線和泉砂川始発の、天王寺行き普通に乗る。実は普段の通勤も、車内でゆっくり一眠りしたいがために、
結構な早起きをして普通で通勤しているので、これは日常となんら変わり映えがしない。天王寺までの1時間あまりを、
いつも通りに眠って過ごす。
 天王寺からは、地下鉄御堂筋線と谷町線を使って、谷町六丁目、通称“谷六”まで。地下鉄だから、もちろん各駅停車である。
 地下街をぶらぶら数分歩いて、近鉄の大阪上本町に到着。大阪線は、地上の頭端式ホームから発車する。
始発駅だけあって特急をはじめより取り見取りだが、私はもちろん普通に乗る。
いよいよ実質的なスタートラインに立った。

 さて、名古屋までの全駅に停まって行く、と決めたは良いが、その道中をどうやって記録し、どのような記事にまとめれば良い
のかは、旅行開始前の悩ましい問題だった。いくら時間があるとはいっても、いちいち駅ごとにホームへ降りるわけではないから、
各駅の写真を撮ったところで、同じような画を並べることになってしまう。それでも何とかして、全部の駅に停まった、という“証拠”を、記事にしなければならない。
 結局、ひと駅停まるごとに、その時の印象をメモっておくことにした。なにしろ名古屋まで90以上ある駅のすべてで、そんな気の利いた観察などできるわけはないから、とにかくその場で頭にひらめいたことを、何でもいいから書きとめるのである。以下、その際のメモ書きをもとに、若干脚色して掲載する。
(掲載している発着時刻は標準のもので、実際には遅延の発生したものもあります)
 なお冒頭の「特急カラー事件」の反省を踏まえ、各乗車列車ごとの記事見出しの背景には、普通車両カラーを使うことにする。

■第1行程 普通 高安行
駅 名 時 刻 記 事
1 大阪上本町 9:00 925発の普通高安行きをピックアップしていたが、家を早めに出たのでキリのよい900発に乗ることにした。
2 鶴 橋 9:02 駅の界隈やガード下に無数の焼肉店が集中していることで有名。まだ朝一番なのでさすがに肉を焼くにおいはしないが、JR大阪環状腺にしろ近鉄にしろ、駅の真下から炭火でいぶされているようなものだから、いつもなら到着した電車の車内にまで臭いが入り込んでくる。
3 今 里 9:05 近鉄奈良線の列車は、大阪上本町駅の地下ホーム(阪神電車なんば線直通)を出ると地上へ現れ、地平・頭端式の大阪線ホームを出たわが列車と、鶴橋〜今里間でピタリと並走する。窓越しに凶器を受け渡しして証拠隠滅を図る、くらいのトリックは成立しそうだ。N村K太郎さん、いかがでしょう。
4 布 施 9:06 ここで奈良線ホームは上層、大阪線ホームは下層に再び分かれる。
名古屋行きアーバンライナー他に抜かれるのを待つ間、向かいに座った女性に目がとまる。美人なんだけど誰かに似てるんだよな、と思っていたが、それが「カルーセル麻紀」だと思い出した途端に、萎えた。
9:10
5 俊徳道 9:12 JRおおさか東線の高架が、近鉄の東側に並行して走っている。こちらのほうが一段高い。
6 長 瀬 9:14 日本でも有数のマンモス校・近畿大学の最寄駅。学生がどっと降り、ほぼ埋まっていた座席の2/3が空いた。
7 弥 刀 9:18 賢島行き特急に抜かれる。もうこのあとはいちいち書かないが(たまに書くが)、近鉄は本当に特急が多い。
8 久宝寺口 9:20 近畿自動車道の高架下をくぐって到着。いつもは車から見下ろすばかりだが、きょうは違う。
9 近鉄八尾 9:22 ここからやや離れてJRの八尾駅もある。あちらの構内はそれなりに広いが、近鉄は相対式ホーム2面2線だけ。駅前は大型チェーンストアや公共のホールがあって、八尾市の玄関口はこちらなのだが。
10 河内山本 9:25 信貴山行きの支線が分岐するので、5面5線と構えが大きい。たまに仕事で息抜きがしたくなると、信貴山ケーブルで信貴山に来ることがある。
11 高 安 9:26 当列車終着。ここで937発榛原行き準急に乗り換える。
駅の南北両側に車庫がある。高安止めの列車がいったん南の引上線へ退いた後、上下本線の双方を横断して北側の検修庫に入れ替えを行ったりしている。

所狭しと車両群が並ぶ高安の構内

本線を横断して車両の入れ替え


■第2行程 区間準急 榛原行
駅 名 時 刻 記 事
11 高 安 9:37 当初予定の957発を早めて937発に乗車。これは大阪上本町が始発なのだが、区間準急なので今里など止まらない駅がいくつかあるから、始発からは乗れない。
12 恩 智 9:39 読みは「おんぢ」と綴る。関西人なら、タレント・浜村淳のラジオCM「恩智のうどん、あぁー、おんぢかった!」でかなり有名。
13 法善寺 9:41 大阪・ミナミにあるお不動さん・法善寺のことではありません。でもなんか関係あんのかな。
14 堅 下 9:42 石積みのホームがかなり古い。
15 安 堂 9:44 近左窓(東側)に連なる生駒山地の山並みが、かなり低くなってくる。
16 河内国分 9:46 その生駒の山並みが切れたところから、大和川が大阪平野へと流れ込んで来る。そのたもとにある交通の要衝が国分の街で、その名のとおり、河内国と大和国の往来をビシッと押さえている。後から来た名張行きの急行から学生多数がこちらへ乗車し、空いていた座席がほとんどふさがる。
9:52
17 大阪教育大前 9:54 その名前のとおりの駅なので、先ほど乗ったばかりの学生客はほとんど降りる。キャンパス移転に伴う新設駅。
18 関 谷 9:56 河内と大和の関所を守るゾ!的な風情があって、いい名前だと思う。
「ゾ」をカタカナにしてみたが、「クレヨンしんちゃん」とは関係ない
19 二 上 9:59 駅のすぐ南にそびえる二上山は古い火山だけに、コニーデといえなくもない山容をしている。日本神話の悲しい物語を持つ山でもある。
山の南麓(この写真では山の向こう側)には近鉄南大阪線が走り、そちらの駅名は「二上山」である。
20 近鉄下田 10:01 実は二上よりも少し離れたここからの方が、山の形はよく見える。
21 五位堂 10:03 車庫のための駅。追い抜きはないが、時間調整で2分待ち。出入庫のためのスジが設定されているのかも知れない。
22 10:06
23 築 山 10:08 このあたりまでくると駅ごとにパラパラと下車するのみで乗車はなく、一両あたり数名しかいなくなる。
24 大和高田 10:10 南大阪線の「高田市」駅は規模が大きいが、こちらはただの2面2線。
25 松 塚 10:12 奈良盆地に出てきても線形はよくならない。ところどころで大和川の支流を乗り越えるためのアップダウンが多く、カーブの途中でも平気で駅を作る。
26 真 菅 10:14 なんとなく菅原道真を連想してしまう駅。乗降はまったくない。
27 大和八木 10:17 京都から伊勢方面への直通特急運転を可能にするジャンクション。このサイトの記事でも登場する盟友のM君は、独身時代ここの駅前のアパートで暮らしていて、僕も何度も来ては雑魚寝した。
10:21
28 耳 成 10:23 大和三山のひとつ「耳成山」(みみなしやま)をかすめて停車。この一帯は、飛鳥・奈良時代の旧跡がごろごろしている。
「耳成」を「みみなり」と読んじゃった人は、耳鼻咽喉科に行ってください。
29 大 福 10:25 縁起の良さそうな名前ですが、やっぱり万葉時代の何かと関係あるんでしょうか。
30 桜 井 10:28 JR桜井線との連絡駅。ここを過ぎると奈良盆地も終わり。
31 大和朝倉 10:30 山肌に取り付いて「これから登るゾ」という気合を感じる駅。ただし「しんちゃん」とはやっぱり関係ない。
ここからの急勾配を高速で駆け上がる様子は、昔からの撮影名所である。
32 長谷寺 10:34 平日だけど中高年の観光客には関係ないらしく、どっと降りる。往年の初瀬鉄道のエピソードは、私がぐだぐだ書かなくても有名。
33 榛 原 10:39 この列車の終着。3面5線の5番線に着き、折り返しとなる。M君はここから歩いて7〜8分のところに、よくできた奥さんと住んでいる。
折り返し専用の榛原駅5番線ホーム

「伊勢志摩ライナー」23000系(榛原)


■第3行程 急行 青山町行
駅 名 時 刻 記 事
33 榛 原 10:52 当初の予定では1127発の名張行き乗車だったが、1052発の青山町行き急行が来たので乗ってしまう。種別こそ急行だが、ここ榛原から先は各駅停車なので別にかまわない。
34 室生口大野 10:58 駅間距離は人口密度と反比例するようだ。寒々とした山里の風景に、遅咲きの八重桜のあでやかさが寂しい。
35 三本松 11:01 分水嶺の斜面に張り付くような駅。
36 赤目口 11:05 ピークを超えて盆地に降りたところに建つ。
37 名 張 11:09 伊賀地域の中心都市で、ここから東京(品川)までをダイレクトに結ぶ、三重交通の高速夜行バスが運行されているほどである。どれほど利用者があるのかと思うが、私は2012年、神奈川県への演奏旅行の帰路にM君と利用した。
駅からすぐ南の斜面には新しい住宅地が開発されて異彩を放つが、列車の方は平日の昼時とあって乗降客は少なく、1両あたり数名の乗車率にも変化がない。
            (写真は名張駅前で、2012年10月撮影)
38 桔梗が丘 11:12 しゃれた駅名のとおりの新しい駅。
39 美 旗 11:15 複線電化の線路上を大型車が走っている事が不思議に思えるような、人跡未踏(に見える)景色の中にある。
40 伊賀神戸 11:18 上野市行きの「上野線」は「伊賀鉄道」になった。有名な廃線跡も健在のようだ。
41 青山町 11:21 この駅名を見る度に、中学・高校の同学年にこんな名前の女性がいたことを思い出す。
この列車の終着なので降りる。当たり前か。
つぎの列車は・・・1203発の伊勢中川行き、か。あれ、それって結局初めに乗る予定にしていた列車ですやん。少々出発を早くしたところで、この区間の運転本数が少なすぎて、選択肢はこれしかないってわけね。
ここで昼食とする。上本町で乗車前に仕込んだ「柿の葉すし」。

ここではじめて一瞬の退屈を覚えたのもつかの間、緊張のアナウンスが。「室生口大野付近で人身事故発生のため、列車に遅れが生じる見込みです。」とっさに時計を見る。11時56分。
この、とりあえず時刻を確かめる、という作業が大切だ。あとで何の役にたつのかたたないのか保証はないが、いざという時の判断を左右する重要なファクターとなる可能性だってある。
とにかくあわてない。このあと、東青山で25分、さらに伊勢中川で31分と、乗り継ぎ時間の余裕はたっぷりある。

青山町の待合室で腹ごしらえ。


留置線や洗浄線を完備した青山町


■第4行程 普通 伊勢中川行
駅 名 時 刻 記 事
41 青山町 12:03 名張11:51始発の伊勢中川行きに乗る。さっきアナウンスがあった人身事故により榛原〜名張間は運転見合わせとなったようだが、この列車は名張での折り返し運用なので不通区間の影響を受けることも無く、定時に出発。
42 伊賀上津 12:06 模型セットにしたくなるような田舎駅。
43 西青山 12:10 昭和50年に付け替えられた旧線が分岐していく。
近鉄が2012年11月13日に調査した当駅の1日あたり乗降人員はズバリ「1人」。タモさんストラップものである。当然、近鉄全駅中の最下位だったという。
44 東青山 12:16 実はこの先の名古屋方面の接続が限られており、このまま乗っても伊勢中川での待ち時間が増えるだけなので、いったんここで降りる。
伊勢中川と当駅間をピストン運行している列車のお迎えを待つことにしたが、その折り返しのための配線の妙はなかなかの見ものだった。


伊勢中川からの列車が到着



4番線で降車後、引き上げ線で待機



3番線に大阪上本町行急行が到着


発車した急行をやり過ごして・・・

上下本線を一気に渡って・・・

1番線に入線してきました

隣接する公園内を旧線跡がかすめる
(林手前の土手)

公園入り口に面した無人の改札



■第5行程 普通 伊勢中川行
駅 名 時 刻 記 事
44 東青山 12:41 伊勢中川から到着した列車からは、まだ大学生くらいと思われる女性が降りてきて、もちろん改札を出るでもなく、首にカメラを提げてホームをうろうろしている。結局その女性と一緒に、折り返し列車で出発。
45 榊原温泉口 12:44 駅構内手前で、旧線と合流。
46 大 三 12:47 伊勢平野へと駆け下っていく。停車本数の少ない無人駅で、行程作成上もっともネックとなった区間。
47 伊勢石橋 12:50 周囲に茶畑が増えてくる。やはり無人駅で、ホームの待合所には「乗車券は車内で」の掲示が。
48 川合高岡 12:53 ようやく平地に出た。
49 伊勢中川 12:58 大阪上本町から4時間、ようやく大阪線を乗りとおす。まだ半分・・・。

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