《1》悶々と、座席車(泣)
 6年前に三国・芦原方面を探索した際に(越前国徘徊録・三国編ご参照)、福井駅前の食事どころのおかみさんと意気投合し、大変お世話になった。常々再訪して礼を述べたいと思い、斯道の戦友・M君とも「いつかはもう一度福井へ行かねばならんね。」と言っていたのだが、いよいよその機が訪れることになった。
 5月連休の頃から計画を練ってはいたのだが、8月になってようやく腰を上げた。当初は氷見で一泊して多少豪華な夕食でもということだったのが、いざ行こうとするとスケジュールがなかなか厳しく、片道夜行を使ってのトンボ帰りという慌しさになった。

 2011年8月6日(土)22時30分、JR西日本大阪駅・11番ホーム。主に北陸方面への長距離列車が発車するホームは人影もまばらである。これから新潟行きの夜行急行「きたぐに」で富山まで行くが、乗車時間が短いから寝台は使わず、自由席の座席車で頑張るつもりである。夏休みシーズンだけに多少の混雑は覚悟して、列車入線の30分前をめどに集合したのだがこれは杞憂に終わり、最後尾1号車の4人がけ1ボックスをM君との差し向かいで確保する。
 定刻に発車してみると各ボックスに1〜2人の客がそれぞれ陣取り、夜行列車としては適度な混み具合。家族二人連れや一人客ばかりで、多人数のグループはまったくいないから車内はひっそりしている。途中駅で多少の乗り降りはあったが、混み具合は同じようなものであった。
 583系を寝台で利用したことは何度かあるが、座席車の利用は初めてだ。一昨年の九州乗りまくりでは、博多から宮崎空港まで、今は無き「ドリームにちりん」で夜明かしをしたが、この時はリクライニングシートであった。583系はシートピッチこそ広いものの、リクライニングはしない。
 一人で乗ってきた年配のご婦人が、車掌に申し出て寝台へ鞍替えしていった。11時過ぎの入線から富山の到着前まで、正味4時間横になれるのであれば、やはり寝台にしておけばよかったかと悔やまれた。草津で「おやすみ放送」があったが、寝台ではないから減光はされない。耳栓、アイマスク、空気マクラ、スリッパの「四種の神器」で完全武装はしているものの、米原、敦賀、福井、金沢…と主要駅ではことごとく目が覚め、富山までの4時間余を悶々と過ごした。

「きたぐに」の入線を敬礼で迎える車掌

各方面の長距離夜行が発着する11番ホーム

眠ったままの車内を後に富山で下車

適度な混み具合にM君も安堵の表情

まもなく富山。一夜の披露が隠せない



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