第六章 《玄武洞 〜 和泉砂川》 さっきの船頭さんに迎えられて対岸へ戻る。行きよりも戻りの方が時間が短く感じられるようだ。 私が戻ると、チケット売りのおばさんは店じまいの仕度の最中。駐車場に白い乗用車がとめられていたが、これは観光客のではなくこのおばさんの通勤用であった。 予定している16時17分の列車まで、30分以上ある。駅の周囲には何もないので、することもなくホームから対岸を眺めていると、店じまいした後のはずなのにさっきの舟がまた客を乗せて玄武洞へ向っている。閉店後の稼ぎは、あの船頭さんのポケットマネーになるのかも知れぬ。 |
■第7ランナー 玄武洞(16時17分発)〜 豊岡(16時23分着) 普通 178D(キハ47) |
やがてやってきた列車【写真39】も地元客で結構にぎわっていたが、席を見つけて進行方向を見て座る。線路際ぎりぎりに流れる円山川は、河口に近いので幅は広く流れもゆったりとしている。 川原は枯れたような冬の色だが、背景のなだらかな山々の穏やかな緑に心が和む。遠景に見えるやや険しい山は名もわからないが、頂には雪をかぶって車窓のアクセントになっている。 その山々の背後に雪雲らしき黒い影が押し寄せ、近かった川面が徐々に市街地の向こうへと押しやられて、但馬の中核都市・豊岡【写真40】に到着した。構内には除雪車がスタンバイしていてさすが雪国と思わせるが、今日の天候では出番はなさそうだ。 |
【写真39】玄武洞を発つ |
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【写真40】豊岡駅 |
■第8ランナー 豊岡 (17時30分発)〜 和田山 (18時02分着) 普通 444M (113系) ■第9ランナー 和田山(18時24分発)〜 寺前 (19時15分着) 普通 1242D(キハ40) ■第10ランナー 寺前 (19時21分発)〜 姫路 (20時05分着) 普通 5668M(103系) ■第11ランナー 姫路 (20時22分発)〜 大阪 (21時19分着) 新快速 2022M(223系-1000) ■第12ランナー 大阪 (21時32分発)〜 和泉砂川(22時33分着) 関空・紀州路快速 4197M(223系-0) |
日も暮れかけて大阪への最終行程に入る。目の前に入線している17時26分発のDC特急「はまかぜ6号」に乗れば終着の大阪には20時12分に着けるが、当然見送る。当方はこれから同じ播但線経由で5本の列車に乗り継いで行くが、それでも大阪着は1時間少々しか変わらないというのは、むしろ速いといえるのではないか。 すっかり日の落ちた但馬路を、この旅でおなじみになった福鉄局カラーの113系で行く。次第に冷え込んできて、国府あたりではホームに風花の舞うのを見るが、車内はほぼ満席の盛況で冷え冷えとしたローカル線の寂しさなどどこにもない。およそ今回の旅ではどの列車も乗車率が良かった。 |
大阪駅から自宅へ電話を入れる。「砂川駅まで車で迎えに行くわ、雪がすごいから」と家内がいう。 大阪駅界隈はまったくどうということはないのだが。 帰宅すると庭が白くなっていた。 【写真47】 目指した城崎に雪は無く、主のいない間に自宅ではこっそりと降っていたのであった。 《完》 |
【写真47】 猫のひたいも雪化粧 |
(C)Takashi Kishi 2003 |