青春18・城崎の旅(第6回)(03/01/26)


第六章 《玄武洞 〜 和泉砂川》


 さっきの船頭さんに迎えられて対岸へ戻る。行きよりも戻りの方が時間が短く感じられるようだ。
 私が戻ると、チケット売りのおばさんは店じまいの仕度の最中。駐車場に白い乗用車がとめられていたが、これは観光客のではなくこのおばさんの通勤用であった。
 予定している16時17分の列車まで、30分以上ある。駅の周囲には何もないので、することもなくホームから対岸を眺めていると、店じまいした後のはずなのにさっきの舟がまた客を乗せて玄武洞へ向っている。閉店後の稼ぎは、あの船頭さんのポケットマネーになるのかも知れぬ。



【写真38】
「タンゴディスカバリー」変じて
快速城崎行き
クリックすると「玄武洞駅スナップ集」。
 飽きずに対岸を眺めていると、豊岡方から列車が接近してきた。明るいエメラルドグリーン調に塗られた車体【写真38】を見て我に返り、カメラのシャッターを切る。
 調べてみると、この列車は3時間前に京都を出て、舞鶴線・北近畿タンゴ鉄道を経由して城崎まで行く。 途中、丹後半島の付け根にある久美浜までは特急「タンゴディスカバリー1号」として運転されるが、以降城崎までは快速(613D)扱いとなる。城崎に直行する客は最初からこんな回りくどい列車には乗らない。
 何のためにわざわざ城崎まで運転されるのかよくわからないが、ローカル運転に充当する車両運用の都合だろうか。ちなみに、時刻表を見てもこの編成が当日のうちに折り返すべき適当な列車は見当たらず、それらしいのは城崎発翌朝9時18分の快速豊岡行き(さらに豊岡〜天橋立間は特急「タンゴディスカバリー64号」として運転)である。あの狭い城崎の構内でひと晩滞留するのだろうか。
 以後、思いの他頻繁にやってくる上下列車を撮ったり、駅の表情を撮ったりして結構忙しく過ごす。



  ■第7ランナー 玄武洞(16時17分発)〜 豊岡(16時23分着)  普通 178D(キハ47)



やがてやってきた列車【写真39】も地元客で結構にぎわっていたが、席を見つけて進行方向を見て座る。線路際ぎりぎりに流れる円山川は、河口に近いので幅は広く流れもゆったりとしている。
 川原は枯れたような冬の色だが、背景のなだらかな山々の穏やかな緑に心が和む。遠景に見えるやや険しい山は名もわからないが、頂には雪をかぶって車窓のアクセントになっている。

 その山々の背後に雪雲らしき黒い影が押し寄せ、近かった川面が徐々に市街地の向こうへと押しやられて、但馬の中核都市・豊岡【写真40】に到着した。構内には除雪車がスタンバイしていてさすが雪国と思わせるが、今日の天候では出番はなさそうだ。

【写真39】玄武洞を発つ

【写真40】豊岡駅


 ここ豊岡一帯はコウノトリが名物で、地元に開港した超ローカル空港「但馬空港」も、別名を「但馬コウノトリ空港」と呼ぶ。現在の生息状況は101羽で、そのうち今年生まれたのは18羽だそうだが、そんなことがわかるというのも、ここ豊岡では交番まで「コウノトリ交番」【写真41】だからである。

 接続時間を利用して商店街で食事をすませる。大阪でもなじみの中華料理チェーンで、遠くへきたようでもここは関西だなと実感する。
 あとは深夜の帰宅まで、また乗り詰めとなる。絶妙な接続の連続でスケジュールがうまくできたと喜び、ひたすら乗るのもいいが、要所要所できちんと食事とトイレの時間を入れておくことの大切さを、最近ひしひしと感じている。

 【写真41】




  ■第8ランナー 豊岡 (17時30分発)〜 和田山 (18時02分着)  普通 444M (113系)
  ■第9ランナー 和田山(18時24分発)〜 寺前  (19時15分着)  普通 1242D(キハ40)
  ■第10ランナー 寺前 (19時21分発)〜 姫路  (20時05分着)  普通 5668M(103系)
  ■第11ランナー 姫路 (20時22分発)〜 大阪  (21時19分着)  新快速 2022M(223系-1000)
  ■第12ランナー 大阪 (21時32分発)〜 和泉砂川(22時33分着) 関空・紀州路快速 4197M(223系-0)


 日も暮れかけて大阪への最終行程に入る。目の前に入線している17時26分発のDC特急「はまかぜ6号」に乗れば終着の大阪には20時12分に着けるが、当然見送る。当方はこれから同じ播但線経由で5本の列車に乗り継いで行くが、それでも大阪着は1時間少々しか変わらないというのは、むしろ速いといえるのではないか。

 すっかり日の落ちた但馬路を、この旅でおなじみになった福鉄局カラーの113系で行く。次第に冷え込んできて、国府あたりではホームに風花の舞うのを見るが、車内はほぼ満席の盛況で冷え冷えとしたローカル線の寂しさなどどこにもない。およそ今回の旅ではどの列車も乗車率が良かった。



 【写真42】和田山で。
  右:第8ランナー
  左:第9ランナー



 【写真43】
 旅の名残雪、か。
 和田山からは今日最後のキハ【写真42】となる。途中山越えの生野あたりでは線路際に雪をみるが【写真43】、それもすぐ消えて山陽との接続駅・寺前に到着。我が地元の阪和線にも回して欲しいような快適なアコモの103系【写真44】で淡々と姫路へ出れば、あとは新快速【写真45】でわずか1時間で大阪へまっしぐらとなる。岡山県に親戚がいる関係で、子供の頃姫路から姫新線に入るDC急行によく乗ったが、その頃は大阪から姫路まではおよそ1時間半を要していた。

 大阪からは関空・紀州路快速【写真46】に乗って我が最寄駅までこれまた一直線で、都心から自宅まで乗り換え無しというのはつくづく便利になったものだと思う。
 この実感が、楽ができてやれやれ、といった年齢から来るものなのか、乗り継ぎが便利だからますます旅行がしやすいぞ、という前向きのものであるか。どちらでもいいが楽に越したことはない(やはり前者である)。
  
【写真44】(寺前)      【写真45】(大阪)      【写真46】(和泉砂川)
第10ランナー          第11ランナー       第12ランナー 
(車内はクリック)


 大阪駅から自宅へ電話を入れる。「砂川駅まで車で迎えに行くわ、雪がすごいから」と家内がいう。
大阪駅界隈はまったくどうということはないのだが。

 帰宅すると庭が白くなっていた。
【写真47】 目指した城崎に雪は無く、主のいない間に自宅ではこっそりと降っていたのであった。



                 《完》

【写真47】 猫のひたいも雪化粧






 (C)Takashi Kishi
 2003