飯田線・雨のち晴れ 第2回 (Oct.21,2007)  

「鉄道の日」でGO!

  2007年10月7日(日)。今日は一日をかけて御殿場線と身延線を乗り通し、中央本線を経て岡谷で一泊する。到着予定は16時28分で、宿舎のチェックインまでに十分時間がある。初めて訪れる街をゆっくり散策して、何か地元のうまいものでも食べたい。
 それにしても、時間の許す限り強行軍を組むことの多いこの種の旅行としては珍しく、余裕綽々の日程である。大物の飯田線を前にした軽い足慣らしといったところで、メインディッシュのステーキを楽しみにしつつ、オードブルの生ハムをチビチビといただくのに似ている。
 もちろん、御殿場線と身延線を軽んじているわけではない。ステーキも生ハムもお互いに、とって代わることのできない名役者である。 

 これから2日間の行程と移動距離、それから「普通に」乗車券を買った場合の運賃計算は下図の通りで、記した距離は営業キロ、(  )内は地方交通線の運賃計算キロである。

 飯田線一線区の距離だけで、大磯から甲府までのジグザグルートを軽く凌いでいることに、改めて驚く。
10月7日(日):
大磯-国府津: 9.9km
国府津-沼津:60.2km
沼津-富士: 20.0km
富士-甲府: 88.4km(97.2km)
甲府-岡谷: 76.3km
  
 小計  254.8km(263.6km)

10月8日(月・祝):

岡谷-辰野:  9.5km
辰野-豊橋: 195.7km(215.3km)
豊橋-名古屋:72.4km
   小計  277.6km(297.2km)


2日間合計:
532.4km(560.8km) 8,720円


参考:大磯-名古屋を東海道線で
直行すると298.2km、4,940円。
 午前8時、タクシーでホテルを出発。
 大磯といえば芸能人の水泳大会、という派手なイメージが私などには染みついてしまっているが、来てみれば海岸沿いに松林を背負って、静かな住宅地の広がる落ち着いた街である。
 天気晴朗にして波高く、一見凪いでいるように見える相模灘も、海辺に寄ってみれば大きなうねりが容赦なく護岸に打ち寄せ、時には激しい波しぶきが上がっている。海岸沿いを走る西湘バイパスは、4車線のうち2車線が今夏の台風による高波で崩壊し、一時通行止めになった。現在も復旧工事の続く現場は、ホテルのすぐ真裏であった。
 車はその西湘バイパスから大磯の市街地に入る。「←志賀直哉旧宅」の立て札などが車窓を通り過ぎる。明治の偉人たちが静かに過ごした往時を偲ぶうちに、大磯駅に到着。ひなびた駅前のたたずまいは文化の香りがした。



 さて、ここで「普通でない」乗車券の買い方の話。
 この飯田線には特急「ワイドビュー伊那路」が走っているが、そんな優等列車で道中をすっ飛ばしてしまっては、「飯田線に乗ってきました」と人様に胸を張って語れないから、もちろん全線を普通列車で乗り通す。
 鈍行の旅とくれば「青春18きっぷ」だが、もちろん今はその発売時期でない。そこで登場するのが「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」である。
 明治5年(1872年)10月14日の新橋〜横浜間鉄道開通を記念した
のが「鉄道の日」(もとの「鉄道記念日」)で、それにちなんで1日乗り放題×3回(人)分が9.180円で発売された。
 有効期間は9月19日から10月14日までで、10月の3連休をあてこんだ企画乗車券だとは言え、この時期に鉄道を開業させてくれた明治の先達に感謝せねばならない。
 これから2人×2日間で4回乗車分の切符が必要なので、「記念きっぷ」だけでは1回足らない。明日よりも今日の方が乗車距離が短いので、岡谷までの片道切符一人分をここで購入する。4,620円。
 例の
「M字開脚」(いちいちピンクにする必要はないが)ルートをメモ書きにして窓口氏に差し出す。大磯駅からこんな乗り方をする客はまずいないのだろう。助役氏ともども興味津々の面持ちであった。

 これら乗車券の購入額合計は、しめて13,800円。一人あたり6,900円となり、普通に買った場合の8,720円に比べて1,820円安くなった。
これで道中の準備は完了。
いよいよ飯田線への旅のプロローグが始まる。



(C)Takashi Kishi 2007
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