近鉄八王子線・ナローの足跡 第5回 (Jun.26,2007) | |
■やっと歩きます |
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一仕事済ませた気になって探索再開。 さてここからがいよいよ本格的な廃線跡歩きになるのだが、どうもいつもとは勝手が違う。1.5キロの廃線跡はすべて舗装道路の一部として完全に残っているので、基本的に「探す」という作業とは無縁のはずである。最初から最後まで川沿いを歩くだけで、山中をさまようわけでも住宅地の路地を徘徊するわけでもないから、風景の変化にも非常に乏しい。 私が4年前、大阪市内に残る貨物線「大阪市場線」の跡を歩いた時には、1.5キロという距離はまったく同じだったが、住宅地あり、緑道あり、フェンスに閉ざされた空き地ありと、短い区間ながら、その表情はさまざまに変わったものだった。 しかしこう書くといかにもつまらなさそうで、いったい何が面白くてそんなところに来ているのかと言われそうだが、もちろんつまらないわけがない。そこが非常に微妙なところである。 正月早々男3人で、見知らぬ三重県の地方都市をただ30分ばかり歩くためにやってきているというこの状況は、かなり重症の非日常である。「こんなところをただテクテク歩いて、いったい何やってんだろう」と思えば思うほど、その非日常感は増幅し、「スキモノだなあ、オレたちも」と、愛好家ならではの喜びに浸れる寸法になっている。わざわざこの旅行記を読んでやろうというほどの方ならば、「バカだねえ」とニッコリ笑ってご理解頂けるに違いない。 |
気まぐれな天白川の流れのままに、道路も不規則なカーブを描いている。M君、H君両氏は並んで黙々と歩いている。時折ぼそぼそと聞こえてくる会話の中身は師弟関係のそれであって、私が割って入る類のものではない。 もう「ちょっと待って」と声をかけもせず、私はカメラを手に、自分の思い描いた画を探す。 彼らとて、もう私のことを待ちはしない。二人の姿は、常に私の視界の先にある。 「君は君 我は我なり されど仲良き」 (武者小路実篤) 同好の士、真の友人とはそういうものであろう。 |
(C)Takashi Kishi 2007 |