近鉄八王子線・ナローの足跡 第4回 (June 1,2007)   近鉄内部線・八王子線 四日市駅

西日野に着きました

 時間が止まったような日永駅の構内探索を堪能して、心地よいけだるさを感じながら日永を後にする。後続の列車で四日市市街のはずれを4分走ると次が終点の西日野で、四日市からわずか3駅、合計の乗車時間は10分に満たない。今日の目的のひとつは、これであっけなく終わりである。
 しかし、故・宮脇俊三氏の名著「終着駅は始発駅」のタイトルを持ち出すまでもなく、「終わりは始まりの始まり」なのであって、要するに本日のメインイベントである八王子線の廃線歩きは、この終着駅たる西日野から始まる。それを言いたいがためにすでに7行も費やしたので、先を急ごう。

 下は、西日野〜伊勢八王子の区間を写した、新旧2枚の航空写真だ。いずれも国土交通省の「国土情報ウェブマッピングシステム」において「国土画像情報(カラー空中写真)」として公開されている。約款に従って、出典を付した上でここに掲出する。

 上段写真は昭和50年撮影。天白川の水害で八王子線が運休したのが昭和49年、西日野〜伊勢八王子間が正式に廃止となったのが昭和51年だから、まさにその狭間の、「空白の1年」とでもいうべき運休期間中の姿を、生々しく今に伝えるものだ。
 そして下段写真は昭和62年撮影。今からすでに20年も前のものとはいえ、河川の改修により拡幅された道路に廃線跡が飲み込まれてしまった様子なども一目瞭然である。その詳細は、順次拡大写真で紹介していくことにする。

 それにしても、これを書いている今でこそもっともらしく写真の紹介などしているが、1月に現地を訪れた際には、当時の写真がこうして公開されていることを、実はまだ知らなかった。謎解きはタネがわからないからこそ楽しいものだが、写真のあることがわかっていれば、もちろん最初から使っていた。


航空写真の出典凡例:いずれも「国土画像情報(カラー空中写真)『四日市』」国土交通省 より
  (A)=ccb-75-28_c50_14(部分)  (B)=ccb-87-4_c4a_11(部分)  (C)=ccb-87-4_c4a_12 (部分)

《昭和50年9月撮影》 写真にカーソルを置くと旧線跡を表示。 (ブラウザによって表示されない時は画像をクリックしてください)  《出典=(A)》


《昭和62年10月撮影》  《出典=(B)及び(C)を継ぎ足して使用》




歩き出す前に、若干の観察
 上段の写真にマウスをかざしていただくと、新旧の西日野駅の位置が表示される。これでもおわかりの通り、現在の駅は以前の場所から東へ100m程度移転している。その付近の様子を下の写真で見てみよう。
 画面右上から田畑の中を進んできた線路がスロープで天白川の土手へ駆け上がり、道路を横断して急カーブで川沿いに取り付いて、しばらく進んだところが旧駅である。
 やや背の高い太陽光の影ができているところがあるから、ここに小さいながらも駅舎が建っていたことがうかがえる。
 なお、本稿の冒頭で紹介した「JTBキャンブックス 近鉄の廃線を歩く」の106ページで、旧西日野駅跡として写真が掲載されているが、この写真の位置は現駅前付近であって、厳密にはさらに西寄りだったと思われる。

(写真をクリックで拡大)

 また、現在の西日野駅は、もともと天白川の堤防へと向かうスロープの途中に作られているから、駅を設置するにあたってはスロープ上の路盤を掘り下げ、水平区間を作ってそこを駅としたことになる。その様子は下の写真でよくわかる。


駅前左手の自転車置き場が旧線跡。


スロープの途上を掘り下げて水平にした。


構内終端部。以前は、左奥に見えている、走っている車の位置(天白川沿いの道路)までスロープで登り詰めていた。


(C)Takashi Kishi 2007
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